2016年7月15日

口腔ケアの方法

 口腔ケアというと歯磨きだけが思い浮かぶかもしれませんが、そうではありません。また高齢者独自の口腔ケア法があるわけではなく、歯や口の状態に合った方法や道具を選ぶことが肝心です。

口腔ケアには、歯ブラシ・歯間ブラシ・デンタルフロス・歯磨剤などを使って歯や口を清潔かつ健康に保つための器質的口腔ケアと、唾液の分泌を促したり舌・口唇・頬などの機能を賦活するための機能的口腔ケアがあります。

1. 器質的口腔ケア

毎日、食後や就寝前の歯や口・舌の清掃を行います。歯周病を予防するためには、1日1回徹底的に清掃すればよいかもしれませんが、エチケットの意味もあるので、必要に応じて行うことをお勧めします。ブリッジ・部分入れ歯・総義歯が入っている方はそれぞれに応じた方法と配慮が必要です。

状態 器質的ケア
自分の歯がある人 歯磨き:歯ブラシ

歯と歯の間:歯間ブラシ・糸ようじ・フロスなど

その他:フッ素入り歯磨剤の使用

部分入れ歯を使っている人 歯磨き:歯ブラシ

歯と歯の間:歯間ブラシ・糸ようじ・フロスなど

その他:フッ素入り歯磨剤の使用

入れ歯の清掃:義歯用ブラシ(機械的清掃)+義歯洗浄剤(化学的清掃)

総入れ歯の人 入れ歯の清掃

義歯用ブラシ+義歯洗浄剤

舌と粘膜ケア:舌ブラシ・粘膜用ブラシ

●ブラッシングの目的
ブラッシングの目的は、歯を磨くことだけではありません。
たとえ歯が1本もなくなったとしても、歯ぐきのマッサージのために、ブラッシングを続けることが大切です。

1.口の中にたまった食べかすや歯垢を取り除き、細菌の繁殖を抑えて歯石を防ぐ。
2.歯ぐきを歯ブラシでマッサージして、血行をよくする。

●ブラッシングのコツ
毎日ブラッシングしているのに、歯石やむし歯などのお口のトラブルが減らない場合は、磨いているつもりでもきちんと磨けていないのかもしれません。

歯ブラシを横に動かして、ごしごしと磨いているだけでは汚れが落ちきらないうえ、歯がすり減ってしまうこともあります。
ブラッシングのコツをつかんで、正しい方法で効果的に磨きましょう。

歯ブラシはえんぴつのように軽く持つ。歯ブラシの当て方は、歯と歯肉の間で45度の角度で当てる。

2~3mm幅で軽く小刻みに20回程度動かす特に歯垢が付きやすい歯と歯ぐきのさかい目などは念入りに。

●義歯のメンテナンス

ブリッジの下面は、歯間ブラシや太めのフロスなどで清掃します。

部分入れ歯の歯にかける金属のバネは、義歯用ブラシの固い方を使って丁寧に清掃します。

人工歯で隣に歯がない場所は、歯ブラシを横から入れて磨いてください。

総入れ歯は義歯用ブラシで全体を清掃します。その際に落とさないように注意してください。
またブラシではとれない汚れを落とすため、義歯洗浄剤を併用することをおすすめします。

2. 機能的口腔ケア

歯や舌、頬など口の機能を維持するために、健口体操(北原・白田先生考案)を行いましょう。

顔面体操
しっかり目をつぶり、唇を横に引いて頬をあげます。その後、口と目を思い切りあけてください。もういちど口をしっかり閉じてから、頬を膨らませて、口を左右に動かします。
舌体操
口を開けて行うものと閉じて行うものがあります。口を開けて、舌を思いっきり出したり引っ込めたり左右に動かし、口の周りをなめるように回します。上下に舌を動かす運動もよいでしょう。口を閉じて行う舌体操は、舌で上・下唇を内側から押したり、頬を押したりします。舌の働きがよくなって唾液も出やすくなり、発音がよくなります。
唾液腺マッサージ
頬・顎の下をマッサージします。

<介助者が口腔ケアを行う際の注意点>

1. 口腔内をチェックする

要介護の状態が長期間続くと、口腔内が放置されているケースも多いので、口腔内に問題がないか観察します。

痛みがあるとケアを避けるので、痛みの原因となる口内炎・欠けた歯・歯肉の脹れ・義歯による傷などの有無をチェックします。

問題があれば歯科医師や歯科衛生士に相談して下さい。

2. 介助は最小限にとどめる

障害の程度によってどの部分を介助すべきかを考えます。

筋肉の衰えの予防や麻痺の改善のためには、自助具や工夫した清掃具を活用しながら、できるだけ本人の残っている能力を活かすことが重要です。

ただし仕上げは介護者が手伝いましょう。

3. 誤嚥に注意する

寝たきり状態で嚥下機能が低下している場合は、顔を横に向け、枕を使って下あごを引き、水分が気管に入らないように注意します。

水分の使用はできるだけ控え、すぐにふき取れるよう綿棒やカット綿等を用意します。

麻痺があれば、麻痺した側を上に健常な側を下にします。

4. 口腔内の乾燥に注意する

口から食べることができない、あるいは服用薬に副作用があると、唾液の分泌量が減少して口腔内が乾燥します。

その結果唾液の抗菌作用や洗浄作用が低下し、口腔内が不潔となり感染しやすくなります。

そこで唾液の分泌を促進するために、口腔機能訓練(舌体操・嚥下体操)やマッサ-ジ(唾液腺・口腔粘膜)などさまざまなメニューを組み合わせた口腔ケアが必要になります。

5. 便利なケア用品を活用する

本人の負担をできるだけ軽減するために、短時間で効率よく行うことがポイントです。

そのためには歯ブラシの他に便利な清掃補助具(スポンジブラシ・歯間ブラシ・舌ブラシなど)をうまく活用して下さい。

これらの商品は、高齢者が使用する前提で設計されており、危険防止の考え方が取り入れられています。

正しく適切に使用すれば、非常に有効です。

定期的な歯科医師による歯科検診、歯科衛生士によるケアを受ける事が大切です。

口腔ケアの考え方を知ってもらう事で、日常で出来る範囲のケアを行い、少しでもすこやかな生活を過ごせるように役立ててください。

*すこやか弁当ではご自宅で簡単に可能な範囲での口腔ケアの情報提供、口腔ケアに必要な介護用品のご提供をいたしますが、本格的な口腔ケアには、歯科医師の管理指導の下で行う必要があり、介助者が必要となります。

一人暮らしの方がお一人で行うには危険が伴いますので、担当ケアマネージャーや歯科医師等に必ずご相談ください。